建築家が建てる家
Renovation M
築40年以上経過したRC造のマンションの1室のリノベーション。
もともとファミリー向けの3DKという壁で区切られた間取りを、家具とカーテンで間仕切ることで可変性をもたせた大きなワンルームとした。
家具で仕切ることにより可変性だけでなく、各空間の連続性ができ、ワンルームだけどワンルームではない多彩な生活の繋がりが内包された空間となる。家具で仕切ることで、空調を1機でまかなうことも出来、採光も緩やかに全体に届き、効率的な室内環境となっている。
Shop B
築年数不明の住居兼薬局として使用されていた木造建築を飲食店へのコンバージョン。
商店街に面しており、周辺は再開発の計画があり、建物自体の価値を問われる場所であった。
建物の価値向上を考えるにあたって、床面積を増やすことも考えたが、空間の豊かさ創出を考えた。
その方法として、古い木造によくある壁と天井で仕切られている空間を飲食店として利用できるように、違法に増築された部分や外壁以外の構造をできる限り解体し、容積を増やすことではなく、内部空間の開放性を得ることにより、空間の豊かさを創造した。
Shop N
調剤薬局として通常営業(休業せず)しながら、間取り変更とインテリア変更工事を終えていく計画。
隔離個室が3室可能となるプラン変更が求められた。
工事期間は2ヶ月で、大きな工事ができるのは日曜・祝日のみの環境であったため、工事内容も考慮した平面計画としなければならなかった。病院だけでなく薬局にも隔離室が求められるご時世となり、Shop Nを通して商業的建築は特に、将来的な視野をもったプランニングと提案が求められると考えさせられた。
House F
山口県周南市の住宅地に建つ、多世代家族の為の2階建木造住宅です。
敷地には、和風の庭と既存建物へのアプローチがありました。
クライアントからの要望は、純和風ではない住宅、親世代の空間と距離感をつくることでした。敷地内の環境をうまく取り込む方法として、既存アプローチの先に中庭を計画しました。
中庭を計画した目的は3つあります。
「既存庭との順応」
和風の庭に建物が圧迫すると、建物と庭が分断されると考えました。
順応する空間として、中庭という選択をしました。
中庭とすることで、既存庭との距離感を緩和し、緩やかに繋げることができました。
「住宅の玄関」
玄関は出入口ではなく、この敷地(外部環境の要素:庭)を楽しむ空間とすることで、住宅の玄関としました。
「各空間の距離感をつくる」
中庭を中心に各空間をコの字に計画し、各空間を緩やかに分断しています。
中庭はプライベートな閉鎖的空間として有効活用されることが多いが、中庭としての場所性を模索した。
この住宅の中庭は、すべての中間領域として機能しています。
House J
山口県周南市城ケ丘の高台に建つ、家族4人で暮らす住宅です。
敷地は、旗竿敷地という、敷地の一部が前面道路まで細長く、路地状に延びており、竿のついた旗に似ている形状をしています。建物というのは、私道であれ、公道であれ、幅4m以上の前面道路に、敷地は2m以上接していなければなりません。
その最低限度を満たした土地で、公道からのアクセスの不便さ、周囲すべてを隣地に囲まれているという敷地環境から、比較的安価な土地となっているのです。しかし、日当りが悪かったり、車の出し入れが面倒なこと、有効に使えるスペースが少ない非効率な土地である場合が多く、本計画の敷地も例外ではありませんでした。
そんな難のある敷地で住宅の計画となりました。
クライアントからの要望は
- ガーデニングのできる家
- 屋根のある駐車スペースを2台分確保すること
- 収納をたくさん確保すること
- 家族みんなで使える勉強スペースを確保し、キッチンから様子が確認できること
- 家の遊び心が欲しい
という5点でした。
ガーデニングのできる中庭のまわりに3つのフロアがあります。
1stフロアは、キッチン、ダイニングルームと団らんスペース
2ndフロアは、勉強スペース
3rdフロアは、就寝スペース
そして、屋根へとつながっています。
中庭は住宅内部にオープンになるだけではなく、屋根の上からも中庭を感じることができます。
また、中庭と屋根の上を利用することにより、内部と外部の連続性を高めています。
そして、狭い敷地において中庭は閉鎖的になりがちだが、屋根上まで中庭をつながりを持たせることにより、中庭を住空間だけで完結させていません。
屋根の上からは、周南コンビナートと瀬戸内海に浮かぶ島々を望むことができ、屋根の上では至福の時間を過ごすことができます。クライアントの要望からうまれた、中庭を中心とした住宅です。
House M
山口県周南市の山間部に建つ夫婦のための終の住処です。
東にバスが通る道路、西に畑や住宅、南•北は住宅に挟まれた敷地です。
住宅が密集しているわけではなく、ぱらぱらと住宅や畑が存在しているような田舎です。
クライアントはもともと住宅の密集した地域に住んでおり、自然豊かな住まいを希望されていました。
また、時間の不規則な仕事を長年続けてきたため、太陽のリズムの中で生活をしたいと望まれていました。
開口部を設けることで光のリズムを感じることができるが、夜間はカーテンを閉めることにより外の光は遮断されます。そこで私は朝太陽が昇ったとき、やわらかい光に包まれて目覚め、生活できる住宅を考えました。
柔らかい光を取り入れる方法として型ガラスやFRP、ポリカーボネートなども考えられましたがコストの面から採用には至らず、身近で安価な素材を住宅の外壁として利用できないかと考えたのが、小学校の体育祭などで使用されるテントです。日差しも雨もしのぐことができ、テント自身にも断熱効果があり、柔らかい光を取り入れることができます。テントと断熱材を組み合わせれば断熱効果は向上します。
間柱の間に光を透過できる断熱材を充填し透湿防水シートで覆い、縦胴縁の上に外壁であるテントを留め、FBによりテントのジョイント部を押さえています。またこのテントを留める縦胴縁は通気層となっており、空気を自然に対流させ快適な内部空間となっています。
内壁には布を採用し、縦胴縁で布をパネル状にし施工しています。
内壁から外壁を構成する材料はどれも光を透過するものを採用し、住宅内部に柔らかな光を届けることを可能にしました。シンプルな木造在来軸組工法となっています。
夜には建物内部の光が柔らかく外部にこぼれ、周辺に柔らかい光をそそぎます。
田舎の車のヘッドライトと開口部からの小さな明かりの寂しい風景にこの住宅は優しい灯火ともなります。
光だけの風景の中での生活では寂しいので、西側に大きな窓をもうけました。
その窓からは緑が天井や床に反射して移りこみ、さまざまな風景をつくり出しています。
どこにいても自然をやさしく感じることができる住宅を目指しました。